
こうした背景のもと、一本義は「キレ味の良さ」を酒造りの身上としてきました。日本酒は食中酒であり、食と共にあってなお、食も酒も花開く。舌の上にいつまでも余韻が残る酒ではなく、流れ消えるような後口のキレの良さを、高級酒から定番酒まですべての酒に共通して大切にしています。

同時に、出稼ぎの酒造り職人たちの減少と高齢化の将来に備え、昭和の終わりころからは一本義社員も醸造部への配置を開始。南部蔵人と社員蔵人のチームによる30年の酒造りを経て、平成28年(2016)からは、南部流に学んだ一本義社員蔵人による酒造りが始まりました。

一本義は2007年に行われた第89回南部杜氏自醸清酒鑑評会において、586出品酒中・第1位の首席賞を受賞。「雑味がなく、きれいな味わい」と表現される、南部流の酒造りの頂点。それは、一本義が長年追い求めてきた味わいの方向が、ようやく見えた瞬間でした。
さらに2016年、第97回を数えた南部杜氏自醸清酒鑑評会において、二度目となる首席賞を受賞。一本義ならではの南部流酒造りの継承が名実ともにかなった受賞となりました。
右:第89回南部杜氏自醸清酒鑑評会・首席賞受賞を記念して発売されるようになった最上級酒「一本義 Le premire rouge」
「杜氏」とは、酒造りの蔵人集団を統率し、酒造りを統括する長役をいいます。南部藩下にて酒造技能を育んだ南部杜氏は、越後杜氏、丹波杜氏を入れた日本三大杜氏の筆頭に数えられる杜氏集団で、その歴史は350年に及びます。