奥越前の酒米ものがたり

山田錦

酒造好適米の王様、山田錦栽培の挑戦

山田錦は兵庫県において大正末期に開発された品種。大粒ながら
「心白(しんぱく。米の中心にある乳白色の部分であり、お酒の麹米をつくるために大切なもの。飯米には心白はない)」が比較的小さく、そのため吟醸酒造りのための高精白に有利な特徴を持っています。

戦後の全国鑑評会では、山田錦を使用した酒が上位を独占。全国酒造家の垂涎の的となり、「吟醸造りなら山田錦」の名をほしいままにしてきました。そんな酒造好適米の王者である山田錦を、ここ奥越前でも。そんな気運が盛り上がったのは、平成9年からでした。しかし山田錦は、栽培の難しさも王様級。田植えは5月下旬から6月初旬で、刈取りは晩秋という晩生の品種のため、比較的温暖な兵庫県はいいが、それより北の冬が早く訪れる地域では困難とされていました。その上、稲の背丈が高く、また粒が大きいことから台風などで倒伏しやすく加えて脱粒しやすい非常に栽培が難しい酒米でした。

それでも、農家・JA・酒蔵では、吟醸酒はもとより普通酒を醸しても表れるであろう山田錦の個性に惹かれ、栽培を着手します。指導に仰いだのは、国税局で鑑定官室長を務められ、退官後は酒と酒米のエキスパートとして活躍されていた、故永谷正治先生でした。

永谷先生の指導のもと、これまではあり得なかった酒米づくりが始まります。それは、山田錦という野生に近い難しい品種を育てるに当たり、「田の地力を見極めるため、数年間は無肥料栽培で作る」「無肥料栽培で、稲は飢餓状態となり縦横に根を張る。こうして倒伏を防ぎ、また吟醸酒造りに理想的な、粗タンパク質が低い米を作る」「一坪あたりに植える株数を通常の3分の2と、丈夫な稲を育てる」ことでした。

毎年、農家・JA・一本義が参加して行われている、奥越前産山田錦の「作見会」。

平成16年当時の、奥越前産山田錦で醸した酒のきき酒会風景。指導にあたられた、故永谷先生も参加した。

キメの細かさ、そして優美さが魅力の酒

奥越前で始まった、初年度の山田錦栽培は1反当たり収量が、わずか2、3俵(五百万石の4分の1程度)という散々な結果でした。その後も無肥料栽培を経て、各栽培田の地力に応じた最小限の肥量の把握など、試行錯誤が続きます。一本義でも収穫された山田錦を使った試験醸造を繰り返していきました。こうした農家・JA・酒蔵の努力が近年、ようやく実りつつあり、倒伏することのない丈夫な稲を育てつつ、1反当たりの収量、6、7俵を収穫できるまでとなりました。

一本義も試験醸造を繰り返しながら、奥越前産山田錦の個性である「キメの細かさ、優美さ」をつかんでいきます。平成19年には、奥越前山田錦を使用し、全国新酒鑑評会で金賞受賞、さらに国内最大の酒造技能集団、(社)南部杜氏協会が開催している歴史ある「南部杜氏自醸清酒鑑評会」において、全国159の酒蔵、586点の吟醸酒が出品されるなか、首席賞(第一位)を獲得することができました。
奥越前産の山田錦を使用した商品は、一本義銘柄では「南部杜氏自醸清酒鑑評会」で首席受賞酒である「Le premier rouge ル プルミエ ルージュ」や「全国新酒鑑評会金賞受賞酒 第一義諦」をはじめとした大吟醸酒など、また伝心銘柄では「純米大吟醸 First class」、また「」には麹米として(掛米は五百万石)に。また良質な日常をテーマにした普通酒「一本義 山田錦」にも使用されています。

  • 五百万石
  • 越の雫