燗酒のすすめ

壱 体にやさしい燗酒

 「酒は天下の美禄」であり、「およそ酒は夏冬ともに、冷飲熱飲によろしからず。温酒をのむべし」。そう説いたのは、長寿のための暮らし方を記した「養生訓」の著者、貝原益軒(1630-1714)です。一年中、冷たからず熱すぎずの温酒をすすめていたのは、「腸を助け、気を巡らす」からとしています。温酒とは体温に近い温度のことで、ぬる燗くらいの温度(約40度)を指すようです。
 アルコールは体温に近い温度で吸収されるため、温かいお酒は一杯飲めば、素直に一杯分の酔いを身体が感じることができます。一方、冷たいお酒は体内に入ってから体温程度に温まるまでしばらくかかるため、「酔ったな」と感じるまでに時間を要します。それゆえ気付かないうちに短時間で摂取しすぎてしまうこともあるのです。「親父の小言と冷や酒は、後になって効いて来る」というやつですね。その点、燗酒は体の調子を確認しながら飲むことができる飲み方なのです。

弐 燗酒いろいろ

 お酒に限らず、人の味覚はその物の温度によって感じ方が変わります。甘味は体温に近づくほどに強くなり、それ以上になると徐々に弱くなっていきます。酸味は温度変化の影響をあまり受けないようですが、苦味や塩味は温度が高まれば弱く感じていくようです。そしてアルコール自体は、体温を過ぎた頃から辛さが増すように感じます。
 その酒質や、酒の持つ香りの質にもよりますから全てに通じるわけではありませんが、一般的には温度が高くなれば甘旨さが増し、体温ぐらいのときが、酒は最も甘旨くまろやかに感じる。それ以上に温度が高まれば逆に辛くキレ鋭くなっていく、といえるかと思います。気分や気候、合わせる酒肴で酒の温度を変えてみるのも、燗酒の楽しみ方なのです。

参 燗つけ方法3種

もっともまろやか「湯煎燗」、もっともお手軽「直火燗」、そして電子レンジでつけた場合の3種類をご紹介いたします。

もっともまろやか“湯煎燗“

①鍋に適量の水を張ります。(①・②では、まだ火にかけないで下さい)
②あらかじめ酒を入れた徳利を鍋に浸し、鍋の水がこぼれないか確認します。
③徳利を一旦鍋から取り出して、鍋に火をかけ、鍋の水が沸騰したら火を止めます。
④沸騰が落ち着いたら、鍋に徳利を浸し2~3分で出来上がり。

※目安として、常温1合の徳利で3分ほどつけると熱燗になります。
※裏ワザとして、火を止めた鍋に最初1分ほどつけた後、引き上げ、30秒ぐらい内側に熱が伝わるのを待ち、再度1分ほど浸け温めると、より風味がまろやかになります。

もっともお手軽“直火燗”

<コップ一杯分のつくり方>
①コップの適量を計るため、まずコップに室温のお酒を注ぎます。
②コップのお酒を、お鍋に移し替えます。
③お鍋に火をつけ、強火で約30秒。
④火を止めて、ゆっくりとお鍋のお酒をコップに戻して出来上がり。

※熱に弱い、薄手のグラス等は割れる恐れがありますので、ご使用をお控え下さい。
※温める前のお酒の温度や量にもよりますが、コップ一杯程度の常温のお酒ならば、強火30秒ぐらいで程よい温かさの、美味しいお燗酒が出来上がります。
※IHコンロの場合は15秒程度を目安にしてください。
※火をかけすぎて沸騰させないように気をつけてください。また、沸騰しなくても温めすぎるとアルコールが気化して分離してしまうことがあります。分離した成分は、温度の低い部分に再度溶け込みますが、急には馴染まないため、酒が辛くあたったりピリピリ感じたりすることがあります。

柚子コップ酒も、おススメです

温コップ酒にひと工夫。
柚子を搾って入れれば「柚子コップ酒」の出来
上がり。日本酒と柚子のバッチリの相性を
お楽しみください。





電子レンジによるお燗

ぬる燗(40℃)~上燗(45℃) 500Wレンジ ご使用の場合
※電子レンジでお燗をつけると、徳利の上下で温度差が出たり、加熱にムラを生じることがあります。
これは徳利の形状によるもので、特に首の細いものや、容器の角、尖った部分は電力密度が高くなり局部的に加熱されるのが原因です。
※徳利の細くなる首部分まではお酒を入れない、また、なるべく角の無い徳利をご使用下さい。

裏ワザ

①徳利を2本用意し、片方の徳利(1本だけ)にお酒を注ぐ。
②酒入り・空の両方をレンジにセットし、必要時間加熱する。
③両方の徳利をレンジから取り出し、酒の中身を空の徳利に移し変える。
④お酒が攪拌されて、温度ムラのないおいしい燗酒の出来上がり。